国道沿いに静まり返る店舗を目撃したドライバーの多くが「ついに廃業したのか」と息を呑みます。結論から言えば、白老町のかに太郎は完全閉店したわけではなく、店主の体調と仕込み状況に合わせて細々と営業を継続するスタイルをとっています。ただし、一般的な飲食店のように「所定の営業日に行けば必ず開いている」という商業ベースの店舗とは完全に一線を画しています。
なぜここまで頻繁に「閉店の噂」が囁かれるのでしょうか。最大の要因は、その外観にあります。トタンの剥がれや傾きかけた屋根、一見すると廃墟と見分けがつかない風貌は、昭和40年代のドライブイン全盛期から半世紀以上の風雪を耐え抜いてきた証拠です。さらに、店主の高齢化に伴って毎日の通常営業が困難になり、仕込みが追いつかない日や体調がすぐれない日には暖簾が出ないため、通りかかった人々が「閉業した」と誤認してSNSに投稿するケースが定着してしまいました。
『オモウマい店』で全国放送された直後は、かつてない大行列と押し寄せる観光客で一時的に仕込みの限界を迎え、臨時休業が続いた時期もありました。かに太郎の店主の現在は、90歳近い高齢でありながらも厨房に立ち続け、自らのペースで無理のない範囲で火を守り続けています。「開いていたら奇跡の巡り合わせ」と呼ばれるほど営業ハードルは上がっていますが、煙突から立ち上る薪ストーブの煙が、いまなお灯り続ける命脈を雄弁に物語っています。