インターネット上のQ&AサイトやSNS上では、「おへそを綿棒で擦ったら黄色い汁が出て止まらない」「へその奥がズキズキと痛み、シャツに嫌な臭いのシミができる」といった切実な声が後を絶ちません。単なる垢の臭いを超えて、浸出液(汁)やズキズキとした痛みを伴う場合、それは生理的な現象ではなく明確な病気のサインです。
へそから汁が出る理由は、局所的な組織障害と免疫反応に大別されます。皮膚の表面に傷がついて血清成分が滲み出しているケースもあれば、体内の奥深くから細菌と戦った白血球の死骸である「膿(うみ)」が噴き出しているケースもあります。臨床上、特に鑑別を急ぐべき疾患は以下の通りです。
第一に警戒すべきは臍炎(さいえん)です。爪などでへその中を引っ掻いたり、無理にごまを取ろうとしたりして微小な傷が生じ、そこから黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などの化膿菌が侵入して発症します。赤み、腫れ、熱感を伴い、黄色から黄緑色のドロッとした悪臭の強い膿汁が排出されます。
第二に、成人になってから突如として発症し、重症化しやすいのが尿膜管遺残症(にょうまくかんいざんしょう)の疑いです。胎児期、胎盤を通じて母親から栄養を得ていた時期には、膀胱とへそは「尿膜管」という管でつながっています。通常は出生前後に自然と閉鎖して線維性の索状物になりますが、これが完全に閉じずに管状または袋状に残存してしまう先天的な形成異常です。
成人になって免疫力が低下したタイミングや、局所の不衛生が引き金となり、残存した尿膜管の内部に細菌感染が起きると、へその奥から耐え難い激痛が生じ、嫌な臭いを放つ膿汁が持続的に排出されます。尿膜管遺残症を放置すると、感染が腹膜に波及して腹膜炎を引き起こす危険性や、中年以降に極めて悪性度の高い「尿膜管癌」へと移行するリスクが存在するため、単なる皮膚トラブルと片付けることは極めて危険です。
さらに、角質と皮脂が長年かけて幾重にも重なり、石のようにカチカチに硬質化した臍石(さいせき)が形成されている場合もあります。臍石が皮膚粘膜を圧迫・潰瘍化させ、慢性的な肉芽形成や排汁を引き起こすケースも散見されます。