「ニギハヤミ」という荘厳な響きは、単なる創作ではなく日本神話に登場する神「ニギハヤヒ(饒速日命)」に由来していると考えられています。ニギハヤヒは『古事記』や『日本書紀』において、神武天皇の東征よりも前に天磐船(あめのいわふね)に乗って大和の地に降臨したとされる高貴な天津神です。
天から地上へと降り立った強力な神の系譜をハクの名に重ねることで、宮崎駿監督は彼を「名もなき小川の精霊」にとどまらず、非常に高い神格を持つ存在として描きました。優雅でありながらどこか威厳を漂わせる白竜の姿は、古代から水や雨を司る龍神信仰と密接に結びついています。
神話におけるニギハヤヒがヤマトの先住勢力として君臨した歴史と同様に、ハクもまた千尋が迷い込むはるか昔から土地と川を見守ってきた主でした。しかし、その高貴な神ですら時代の波には抗えなかったという現実が、物語に深い哀愁を与えています。