日本のフルーツ消費動向を分析すると、かつて昭和から平成初期にかけて主流だった「皮を剥き、種を吐き出しながら食べる巨峰」から、手や口を汚さずにそのまま食べられる「種無し・皮ごと品種」への完全なパラダイムシフトが起きました。これは現代社会のタイムパフォーマンス志向や、ゴミを出したくない都市型ライフスタイルと完全に合致した結果です。
しかし、生産側の視座に立つと、種無し栽培は「自然の生命維持活動に逆らう高度な人為的介入」であり、相応のコストとリスクを背負う行為に他なりません。本稿の総括として、家庭菜園において種無しぶどう作りに挑戦すべき人と、あえて種あり栽培に留めるべき人の判断基準を提示します。
種無しぶどう栽培に挑戦すべき人
- 日々の観察時間を確保できる人:開花前後の約2週間、毎朝欠かさず庭に出て花の開花ステージを細かくチェックできる環境にあること。
- 作業の緻密さを楽しめる人:ミリ単位の濃度計量、秒単位の浸漬時間、カラーピンによる個別管理など、実験的で緻密な作業に喜びを見出せる人。
- 市販クオリティのシャインマスカットを庭で収穫したい人:手間を惜しまず、摘粒や袋かけまで含めたフルコースの作業を完遂する意欲がある人。
種無し栽培を避けるべき人(種あり栽培が推奨される人)
- 週末しか手入れができないサンデーガーデナー:ジベレリン処理の適期は「2〜3日」の幅しかありません。週末に雨が降ったり開花タイミングが合わなかったりすると、その年の種抜きは高確率で失敗します。
- 薬剤の使用を極力ゼロに抑えたい自然農法志向の人:ジベレリンを使わずに人為的に種を抜く手法は現在の農業技術では存在しません。無農薬にこだわるのであれば、種が入る自然な受粉に任せ、樹上で完熟させる昔ながらの栽培法を選ぶのが賢明です。
- ブラックオリンピアや藤稔など、本来のコクと風味を楽しみたい人:品種によっては、有核(種あり)で育てた方が果汁の糖酸バランスが深まり、ジベレリン処理特有の果皮の硬化を避けられるケースもあります。