飼い主が日常生活で最も頻繁に目にするのが、「寝ている時にしっぽを振る」現象や「呼びかけた時にしっぽの先だけを動かす」仕草です。これらは決して無意味な反射行動ではなく、猫特有の合理的なコミュニケーションシステムに基づいています。
まず、猫の名前を呼ぶとしっぽを振る心理についてです。飼い主が「〇〇ちゃん」と呼びかけた際、猫が鳴き声で返事(「ニャー」)をせず、耳をこちらに向けながらしっぽの先端だけをピクピクと振ることがあります。これは決して飼い主を無視しているわけではありません。猫にとって鳴き声を出す行為は一定のエネルギーを消費するため、「声は聞こえているし、あなたのことは信頼しているけれど、今は動く気分ではない」という極めて親愛度の高い「省エネな返信」を行っている状態です。
一方、猫が寝ながらしっぽを振る真相には、睡眠深度と脳の活動状態が深く関わっています。猫は1日の睡眠時間(平均12〜16時間)のうち約7〜8割が浅い眠りであるレム睡眠です。レム睡眠中、猫の脳内では狩りのシミュレーションや日中の出来事の記憶整理が行われており、夢を見ている最中に無意識の神経伝達としてしっぽが動くケースがあります。また、睡眠中であっても聴覚器官は周囲の環境音を常時モニタリングしており、飼い主の足音や生活音を感知して「安全確認完了」の合図としてしっぽを小さく動かすことも確認されています。