経済界と株式市場が最もシビアな視線を注ぎ続けているのが、「楽天グループの事業承継(後継者問題)」です。日本を代表する巨大コングロマリットにおいて、創業者の息子が後継ぎとして指名される可能性はあるのでしょうか。
結論から言えば、長男が直接的に楽天グループの次期トップに就任する可能性は、現役経営陣の構想としても市場のガバナンス上も極めて低いと判断するのが妥当です。その根拠は、三木谷氏自身が長年にわたり公の場で発信してきた経営哲学にあります。
かつて経済誌の単独インタビューにおいて、三木谷氏は「会社は創業家のものではなく、ステークホルダーと社会の公器である」「シリコンバレーの先進企業を見ても、創業者の子供がそのままトップを継ぐ形態は合理的ではない」という趣旨の発言を幾度となく繰り返してきました。事実、Google(Alphabet)やApple、Microsoft、Amazonといったメガテック企業はいずれも創業者の子供への世襲を行わず、能力主義に基づいたプロ経営者がバトンを継承しています。
さらに、楽天は東証プライム上場企業であり、海外機関投資家の保有比率も高い国際企業です。巨額の赤字を計上しながらもモバイル投資を推進してきた経緯から、コーポレートガバナンスに対する市場の監視の目は極限まで厳しくなっています。実績のない創業家親族のトップ就任は、株主総会での反発や株価急落を招くリスクが明白であり、合理性を最優先する三木谷氏がそのような選択肢を採るとは考えにくいのが実情です。