京都・松原通に本店を構える大西常商店は、昭和初期から続く京扇子の名門です。しかし、生活様式の欧米化や安価な輸入品の台頭、冠婚葬祭の簡素化によって、京扇子業界全体の市場規模はピーク時から大幅に縮小していました。その構造的な危機に風穴を開けたのが、現代表取締役である大西里枝氏の就任です。
大学卒業後、大手通信会社で営業やマーケティングの実務経験を積んだ大西氏は、実家の経営危機を目の当たりにして事業承継を決意。2016年に家業へ戻り、2026年に4代目社長に就任しました。旧態依然とした問屋主導の商慣習や職人の高齢化という深刻な課題に対し、彼女が打ち出したのは「伝統工芸の価値を現代の日常に翻訳し直す」という大胆なアプローチでした。
テレビ番組の経済特集やドキュメンタリーへの出演を機に、その飾らない人柄と鋭い経営手腕が話題を呼び、大西常商店の名は全国へと知れ渡ることになります。「伝統を守るために、伝統を壊す勇気を持つ」という姿勢は、後継者不足に悩む全国の中小企業や工芸関係者からも大きな反響を呼びました。