画面越しにも香りが漂ってきそうな絶品料理の数々は、本作のもう一つの主役だ。劇中に登場するのは、洗練された高級フレンチではなく、家庭の温もりと職人のこだわりが同居する素朴で奥深いフランス料理である。
じっくり煮込まれたポトフ、ハーブが香るローストチキン、焼き立ての香ばしいバゲット――。フードスタイリングを担当した現地トップシェフの指導のもと、調理の音や湯気、食材に刃が入る瞬間の音線まで完璧に計算されている。食べる人の心をじんわりとほぐしていく料理の描写は、観る者の胃袋と涙腺を同時に刺激することだろう。