日常会話やメディアで頻出する生ける伝説の意味を辞書的に紐解くと、「存命の身でありながら、すでに後世へ永く語り継がれることが確実視されるほどの並外れた功績を残した人物」を指します。ネット上の知恵袋やSNSでは「生きる伝説」と「生ける伝説」のどちらが文法的に正確なのかという議論が度々巻き起こりますが、国語学的な観点において「生ける」は動詞「生く」の已然形に存続の助動詞「り」が付加した文語の連体形であり、古風で厳かな格調の高さを帯びています。口語表現の「生きる伝説」も間違いではないものの、報道機関や公式のセレモニーでは重厚感を重んじて「生ける伝説」が選ばれる傾向にあります。
この表現の原点、いわゆる生ける伝説元ネタは、英語の定型表現である「Living Legend(リビングレジェンド)」の直訳です。英米のジャーナリズムでは古くから、モハメド・アリやボブ・ディランのように、同時代に呼吸しながらすでに教科書や殿堂(Hall of Fame)に名を刻むべき人物に対して惜しみなく使われてきました。
ここで多くの人が疑問を抱くのが、「レジェンド」と「生ける伝説」の違いです。現代の日本語圏において「レジェンド」という言葉はややカジュアルに消費されがちで、過去に一度大きな大会で優勝した元選手や、業界で長年勤め上げたベテランに対しても敬称代わりに使われます。さらにレジェンド単体では故人も内包します。対照的に「生ける伝説」と呼ばれるためには、極めて厳格なハードルが存在します。それは「現役あるいは存命であり、その一挙手一投足がリアルタイムで人類の歴史を更新し続けている」という生々しい臨場感を伴っていなければならない点です。