なぜ、家庭で作るこんにゃくの煮物は中まで味が入りにくいのか。その答えは、表面を覆う水分と独特の皮膜にある。プロの料理人が秘かに実践している最大の裏ワザは、「塩揉みによる脱水」と「手ちぎり」、そして「から煎り」の3工程を徹底することだ。
包丁で綺麗に切るのではなく、スプーンや手で一口大にちぎる。これだけで表面積が約1.5倍に広がり、断面に微細な凹凸が生まれる。そこに塩を振って揉み込み、出てきた水分をしっかり絞り出す。仕上げに油をひかないフライパンでキュッキュッと音が鳴るまでしっかりから煎りすれば、内部の水分が抜け、まるでスポンジのように濃密な味噌ダレを吸収する準備が整うのだ。
合わせる味噌ダレは、赤味噌と白味噌をブレンドし、みりん、酒、少量の砂糖、出汁を加えたもの。から煎り直後の熱い状態のこんにゃくに、一気にこのタレを絡めて弱火でじっくり煮詰め、一度火を止めて冷ます。冷めていく過程で味がぐんぐん奥まで染み込み、ひと口噛めば料亭さながらの深いコクとジュワッと広がる濃厚な旨味を堪能できる。