総合病院や循環器クリニックの現場を取材すると、医師たちが異口同音に訴えるのが「若年・中年患者の油断」です。健診結果の判定に「要観察」「要精密検査」の文字が並んでいても、上が120〜130mmHg程度に収まっていると、受診行動を起こす人は3割未満にとどまるという実態があります。
IT企業に勤務する40代男性は、当時の心境を診察時の問診でこう告白しています。「上が122で下が94でした。『上が140を超えなければ高血圧じゃない』とネット掲示板などで見聞きしていたため、測定ミスかその日の寝不足のせいだろうとタカをくくっていました。3年後の健診では上が150、下が105まで跳ね上がり、頸動脈エコーで動脈硬化性プラークが発見されて青ざめました」。
SNSや健康相談プラットフォーム上でも、「下だけ高いのは体質?」「家庭用血圧計の故障では?」といった書き込みが数多く散見されます。しかし、下の血圧放置による動脈硬化リスクは段階的に牙を剥きます。末梢血管の慢性的な硬化を放置すると、やがて太い主幹動脈まで硬くなり、心臓のポンプ圧を受け止めきれなくなります。その結果、最初は下だけが高かった状態から、数年〜10年後には上も下も異常値を示す「収縮期・拡張期混合型高血圧」へと悪化の階段を駆け上がることになるのです。