広く知られる「人間だもの」というフレーズですが、その発祥には相田みつをの波乱に満ちた経歴と壮絶な生涯が深く刻み込まれています。栃木県足利市に生まれたみつをは、若くして二人の兄を戦争で失うという苛烈な喪失体験を味わいました。「生き残ってしまった自分」という消えない苦悩と向き合うなかで、曹洞宗の高僧・武井哲応禅師と出会い、長年にわたる参禅と自己探求の日々へと身を投じます。
相田みつを美術館の館長であり長男の一人(かずひと)氏の手記や公式資料によると、みつをは決して穏やかな聖人君子などではなく、自らの弱さ、ずるさ、嫉妬心に誰よりも激しく苦しみ、葛藤し続けた人物でした。生活困窮のなかで筆を執り、何千枚、何万枚もの反故紙を積み上げながら、自らの内面を削り出すようにして言葉を紡ぎ出していったのです。
つまり、「人間だもの」の由来は、失敗を正当化する軽薄なセリフではなく、「どれほど取り繕っても、人間は欲深く、弱く、愚かな存在である」という冷徹な事実を直視した上での、ギリギリの告白でした。自分自身の泥臭い本性を徹底的に見つめ抜いた末に出てきた言葉だからこそ、数十年を経ても色あせない強度を放っています。