実写化作品は往々にして原作ファンからの批判に晒される。しかし『ちはやふる』は公開当初からネット上の評判が異例の好意的なトーンで推移した。その理由をデータから検証しよう。
興行収入を見ると、『上の句』は約9.2億円、『下の句』は約7.8億円、『結び』は約13.2億円を記録。3作品合計で30億円を超えるヒットとなった。実写化漫画映画としては決して爆発的な数字ではないものの、製作費に対する回収率とDVD・Blu-rayの売上、配信での視聴数を含めると十分な商業的成功を収めたと業界内では評価されている。特に『結び』がシリーズ最高の興行収入を達成したことは、観客がシリーズを通して作品世界とキャストへの信頼を深めていった証左と言えるだろう。
ネットの反応を振り返ると、公開当時のSNSやレビューサイトでは「広瀬すずが千早そのもの」「松岡茉優の詩暢が怖いくらい完璧」「新田真剣佑の太一が理想通り」といったポジティブな声が多数を占めた。実写化発表時には「また原作を潰すのか」という警戒感もあったが、キャストビジュアル解禁の段階で空気が変わったという。特に、公式から発表されたキャストビジュアルの再現度の高さが話題を呼び、「これは見たい」という前向きな期待感へと世論が動いた。実写化成功の鍵は「発表時のビジュアルでどれだけ原作ファンを納得させられるか」にかかっているが、本作はその最初の関門を見事に突破したのである。
さらに、競技かるたの描写のリアリティもネットの高評価に寄与した。キャスト陣は撮影前に数ヶ月に及ぶかるたの特訓を受け、広瀬すずと野村周平は実際に試合形式で互角に戦えるレベルまで上達したと制作スタッフがインタビューで語っている。「畳の上の所作」「札を払うスピード」「試合中の緊張感」が本物だったからこそ、競技シーンが迫力を持ち、原作ファンも「かるたのシーンだけでも見る価値がある」と絶賛した。