SNSや動画配信サイトで「ボロボロのカードが100万円」といったセンセーショナルな切り抜きが拡散されるにつれ、現場の査定デスクでは持ち込み客とのトラブルや認識の齟齬が増加しています。旧裏面を取り巻く情報には、いくつかの重大な誤解が存在します。
第1の誤解は、「旧裏面なら何でも高い」という思い込みです。当時大量に流通したノーマルカード(コラッタやマダツボミなど)の通常版は、現在でも1枚数十円〜百円前後でストレージコーナーに並んでいます。高騰しているのはあくまで「初版マークなし」「人気ホロカード(リザードン、ゲンガー、エーフィ、ブラッキーなど)」「限定プロモ」という、全体の数パーセントに過ぎない特異点だけです。
第2の誤解は、「傷があってもそれなりの値段で売れる」という錯覚です。現行カードのコレクター以上に、旧裏面のバイヤーは状態にシビアです。表面の微細な折れや裏面の擦り傷(スレ)、縁の白欠けが1箇所あるだけで、買取価格は美品基準の「10分の1」から「50分の1」まで暴落します。ネット掲示板の相談窓口には、「買取上限30万円と書かれていたリザードンを出したら、傷あり判定で1万5千円と言われた」という嘆きが絶えません。
第3の盲点は、素人保管による経年劣化です。実家の押し入れ環境(夏場の高温多湿、冬場の乾燥)は、紙のセルロース繊維を確実に破壊します。湿気によるカードの「反り」や、長年の密着による「張り付き跡」が発生している場合、修復は不可能です。見つけた直後に素手でベタベタ触ったり、ティッシュで強く擦って油分を拭き取ろうとした結果、取り返しのつかない摩擦傷をつけて価値を失わせるケースが後を絶ちません。