一般的な子ども向け番組やヒーローショーでは、着ぐるみの中で動く「スーツアクター」と、後から音声を当てる、あるいは事前に収録したテープに合わせて動く「声優」が完全に分業されているケースが通例です。しかし、ワンワンは違います。放送開始当初から一貫して、声優のチョーさん(本名:長島茂)自身が着ぐるみの中に入り、頭部に装着した小型マイクを使って自らの声で語りかける「生アフレコ」という極めて稀有なスタイルを取り続けています。
関係者や制作陣の証言によると、現場ではワンワンの頭部内部に特殊な通風構造と小型ヘッドセットマイクが仕込まれており、スタジオ収録はもちろん、横浜アリーナをはじめとする巨大会場のステージイベントでも、チョーさんはリアルタイムで息を乱さずに喋り続けています。録音音声では決して生まれない、共演する子どもたちやおねえさんの突発的なリアクションに即座に反応する絶妙な間合い、現場を沸かせる軽妙なアドリブは、チョーさんが中にいるからこそ生み出せる至芸です。
特筆すべきは、その着ぐるみの重量です。衣装の骨格やファー生地、内部の通信機器を含めた総重量は約20キログラムに達します。これは大人の男性が重い登山用バックパックを背負いながら、視界がわずか数センチのスリットに限られた密閉空間の中で、全力で歌い、踊り、飛び跳ねることに匹敵します。真夏のスタジオや照明が照りつけるアリーナの舞台裏では、数分動くだけでサウナ状態となり、衣装を脱いだ瞬間に数リットルの汗が噴き出す過酷な環境です。2026年現在もこの体制を維持している事実は、日本の放送界における生ける伝説と呼ぶにふさわしいものです。