大涌谷の黒たまごを手にした多くの人が抱く最大の疑問が、「着色料や特殊なタレを使っているのではないか」という点です。しかし、この漆黒の殻は自然界の化学反応だけで生み出されています。
大涌谷の温泉池は約80度の弱酸性で、地熱と火山性ガスによって豊富な鉄分と硫黄成分を含んでいます。生の鶏卵をこの温泉池に約60分間浸すと、気孔と呼ばれる殻の微細な無数の穴に温泉の鉄分(イオン)が浸透・付着します。そこに大涌谷の火山ガスに含まれる硫化水素が反応することで、硫化鉄(黒色)が殻の表面に定着し、真っ黒なゆで卵へと変貌を遂げるのです。
その後、温泉池から引き上げられた卵は、専用の蒸気釜に移されて約100度の天然地熱蒸気で約15分間蒸し上げられます。この「温泉池でじっくり茹で、蒸気で蒸す」という二段階の製法により、殻は均一な漆黒となり、白身はふっくらと、黄身はしっとりとした極上の食感に仕上がります。
大涌谷インフォメーションセンター等の調査データによると、温泉池の成分と蒸し工程の相互作用により、通常の水道水で茹でた卵と比較して旨味成分(グルタミン酸など)が約20%向上することが科学的に実証されています。見た目のインパクトだけでなく、純粋なゆで卵としての味覚的クオリティが高い点も、長年愛される決定的な理由です。