近年、SNSやYouTube、掲示板などのオカルト系コンテンツで頻繁に取り上げられるのが「童謡の歌詞に隠された怖い意味」というジャンルです。『あめふり』もその例外ではなく、複数のショッキングな都市伝説が独り歩きしています。
最も広く拡散されている説が、「ずぶ濡れの坊ちゃんは水死した少年の霊」という怪談です。「柳の木の下で泣いている」というフレーズが日本の古典的な幽霊画(柳の下の足元がない幽霊)を連想させること、そして「冷たいね」「蛇の目へおはいんなさい」という言葉を「あの世への誘い」と深読みする解釈がネット上で定着しました。さらには「身代金を目的とした子どもの誘拐手口を歌ったもの」という突飛な陰謀論まで見受けられます。
結論から申し上げると、これらのオカルト説はすべて後世に作られた悪質なこじつけであり、一次資料における裏付けは皆無です。白秋の研究者や近代文学史の資料を確認すると、白秋が本作を執筆した神奈川県小田原市周辺の街道筋には、排水や風情のためにごく普通に柳の並木が植えられていました。雨宿りをする場所として「大きな葉を広げる柳の根元」を選ぶのは、当時の生活環境において極めて自然な描写です。
人間には、無垢で純粋なものほど裏に不気味な背景を見出したがる心理傾向(認知的歪みやコントラスト効果)が存在します。『かごめかごめ』や『さっちゃん』と同様に、誰もが知る国民的童謡だからこそ、ネット時代におけるクリックベイト(関心誘導)の標的にされたというのが真相です。