目尻から外側に向かって扇状に広がる複数のシワを、なぜ私たちは「カラスの足跡」と呼ぶのでしょうか。その語源と意味を探ると、日本語独自の比ゆ表現にとどまらず、海外でも古くから共通して用いられてきた歴史が見えてきます。
英語圏でも目尻のシワはまったく同じニュアンスで「crow's feet(クロウズ・フィート=カラスの足)」と表現されます。14世紀の詩人チョーサーの文学作品にも登場するほど古い歴史を持ち、世界共通で「年齢を重ねたサイン」の象徴として認識されてきました。
生物学的に見ると、カラスを含む多くの鳥類の足は「三前趾足(さんぜんしそく)」と呼ばれる特徴的な構造をしています。これは前方に3本、後方に1本の指が伸びる形状で、地面を歩いた跡にはくっきりと3方向に分かれたラインが残ります。カラスの足跡の特徴は、ハトやスズメなどの足跡と比べて指が太く長く、地面に爪先まで力強く刻まれる点にあります。他の鳥の足跡との見分け方としても、サイズが約7〜9cmと大柄で、前方の3本指の開きがダイナミックであることが挙げられます。
この前方に向かって3つに分かれた鋭い形状が、人間の目尻から放射状に伸びる3本前後のシワの見た目と酷似していることから、洋の東西を問わず「カラスの足跡」という通称が定着しました。