ネット上の旅行記などでは時折、「路線バスを乗り継いで石垣島をぐるっと一周するエコな旅」といった魅力的な見出しが踊ります。しかし、観光ジャーナリストの視点から現場のダイヤを精査すれば、この「バス一周旅行」は極めてリスクの高い行為であることが分かります。
最大の罠は、北部地域(米原・野底・平久保方面)の運行密度の低さです。市街地や川平周辺の過密ダイヤとは対照的に、島北部へ向かうバスは1日に片道わずか2〜3本程度しか走っていません。もし途中の絶景スポットで途中下車した場合、次のバスがやってくるのは3時間後、場合によっては最終便の通過後という過酷な現実が待ち構えています。
ここには、現代の旅行者が無意識に抱える「タイパ(タイムパフォーマンス)至上主義」と、沖縄の離島が持つ固有の時間の流れとの深刻な心理的摩擦が存在します。「1分単位でスケジュールを詰め込み、効率的に名所を全制覇したい」という都市型の思考パターンのまま車なし石垣島観光に挑むと、1本の遅延や接続待ちによって旅程全体が崩壊し、旅情を味わうどころか強いストレスと焦燥感に支配されることになります。過度な欲張りを捨て、拠点を絞る潔さこそが求められます。