オーディション番組『Xファクター』で5人の才能を見出し、一つのグループへと束ね上げたサイモン・コーウェルの直感は、まさに慧眼だった。彼が率いるレーベルSyco Musicとソニー・ミュージックエンタテインメントは、旧来のテレビやラジオ中心のプロモーションからいち早く脱却を図る。
ファンが自主的に拡散したくなるようなソーシャルメディア主導のキャンペーンを展開し、ライブの熱狂や舞台裏の素顔をリアルタイムで共有した。後に公開されたドキュメンタリー映画『ワン・ダイレクション THIS IS US』にも記録されている通り、ファンとアーティストが強固な連帯感で結ばれる現代型ファンダムの原型は、この緻密なメディア戦略によって築き上げられたのである。