本作最大の見どころは、何と言っても舘ひろしと神田正輝による濃密な芝居の応酬にあります。『西部警察』や『ゴリラ・警視庁捜査第8班』など、アクション全盛の昭和・平成テレビ界を駆け抜けた二人が、円熟味を帯びた初老の男たちとして真正面から対峙した意義は極めて大きいと言えます。
当時の制作発表記者会見や現場関係者の証言によると、両者は「予定調和の仲良し劇には絶対にしない」という共通認識を持ってクランクインに臨んだと伝えられています。舘ひろしが演じる尾根は、無精髭をたくわえ、派手なガンアクションを封印した泥臭い警察官。一方の神田正輝が演じる板垣は、ボロアパートに暮らし、愛用のノートとペンだけで巨悪に立ち向かう研ぎ澄まされたジャーナリスト。リハーサルから張り詰めた空気が漂い、台本の一言一行に対する解釈を巡って監督を交えた白熱した議論が重ねられた現場の熱量は、画面越しにも強烈なリアリズムとして伝わってきました。
脇を固めるキャスト陣のアンサンブルも見事でした。第1シリーズで板垣の過去を知る元同僚キャップ役を熱演した徳重聡をはじめ、高島礼子、中村玉緒といった実力派が物語の重みを与えました。さらに第2弾では栗山千明が組織の論理に葛藤する若手刑事を凛とした佇まいで体現し、第3弾では志田未来や神保悟志が事件の鍵を握る複雑な心境を見事に表現しました。主役二人のカリスマ性に寄りかかることなく、登場人物全員がそれぞれの「生活」と「業」を抱えて息づいている点が、本作を名作たらしめている真髄です。