『母さん、俺は大丈夫』の物語を語る上で欠かせないのが、主人公・佐々木諒平のモデルとなった実在の少年、佐々木諒(ささき りょう)さんの存在です。諒さんは島根県出雲市出身で、県内有数のサッカー強豪校として知られる島根県立大社高等学校のサッカー部に所属していました。
幼少期から類まれなボールタッチと広い視野を持ち、仲間からの信頼も厚かった諒さんは、高校2年生のときにチームの副キャプテンに就任。全国高等学校サッカー選手権大会への出場を本気で目指していた矢先、原因不明の激しい頭痛と視覚異常に襲われます。病院での精密検査の結果、告げられた病名は極めて予後が厳しいとされる「急性脳腫瘍」でした。
過酷を極める開頭手術や抗がん剤治療、放射線治療に耐えながらも、彼の心からサッカーへの情熱が消えることはありませんでした。当時の主治医やサッカー部関係者への取材記録によると、諒さんは右半身の麻痺や言語障害と闘いながらも、「もう一度あいつらとサッカーがしたい」という一心でリハビリを継続。その不屈の闘志は、作家・清水久美子氏の心を激しく揺さぶり、渾身のノンフィクション単行本『サッカーボーイズ 再会のグラウンド』(カンゼン刊)として結実しました。ドラマはこの原作をもとに、実際の闘病記録と周囲の証言を綿密に構成して制作されたのです。