子供の発達障害で代表的な疾患が「ASD(自閉スペクトラム症)」と「ADHD(注意欠如・多動症)」です。両者は併発することも少なくありませんが、行動の背景にある神経心理学的なメカニズムは大きく異なります。
ASD(自閉スペクトラム症)の特徴とコミュニケーション難の背景
ASDの根本的な特徴は、「対人相互反応の障害」と「常同的・反復的な行動パターン(こだわり)」の2点に集約されます。脳内の情報処理において、文脈の理解や曖昧な指示の解釈が困難なため、相手の意図を察することに強いエネルギーを消費します。
ASDの子供が見せるかんしゃくの理由は、わがままではなく「見通しの立たなさに対する強い不安や恐怖」です。予定が急に変わったり、自分のルーティンが崩されたりした際に、世界が崩壊したかのようなパニック状態に陥ります。言語による抽象的な説明よりも、絵カードやスケジュール表を用いた視覚的な構造化が劇的な安心感につながります。
ADHD(注意欠如・多動症)のサインと衝動性のメカニズム
ADHDは、脳の前頭前野における神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)の機能異常が主因とされています。これにより、自己制御や行動の抑制機能(実行機能)がうまく働きません。
ADHDの子供が見せる落ち着きのなさの理由は、外部からの刺激に反応しすぎてしまう「不注意」と、頭に浮かんだ衝動を行動に移すブレーキが効かない「衝動性」にあります。「先生の話を聞いていなければならない」と頭では分かっていても、窓の外を飛ぶ鳥や隣の席の筆箱に意識が引っ張られてしまうのです。これを「集中力がない」と叱責するのは逆効果であり、刺激を減らした座席配置や短いタスクへの分割が必要です。