売上だけで判断は危険?損益計算書の読み方とプロが教える5つの利益の真実

売上だけで判断は危険?損益計算書の読み方とプロが教える5つの利益の真実

売上だけで判断は危険?損益計算書の読み方とプロが教える5つの利益の真実とはどのようなものなのか? 主要なファクトを簡潔に解説します。

インターネット上の投資コミュニティやSNS上には、損益計算書に関する単純化された誤解が数多く散見されます。代表的な2つの誤認を是正し、実務で騙されないための視眼を提示します。

第1の誤解は、「当期純利益が赤字に転落した企業は危険であり、黒字の企業は安全である」という見方です。前述の通り、当期純利益が赤字になる理由には構造的な衰退だけでなく、前向きな「経営の外科手術」が含まれます。たとえば、不採算事業の工場を一括で減損処理したり、将来に向けた構造改革費用を特別損失として一挙に計上した場合、巨額の最終赤字が発生します。しかし、これは過去の負の遺産を処理して翌期以降の減価償却費負担を軽くする措置(いわゆるビッグ・バス)であり、本業の営業利益が黒字を維持していれば、業績はV字回復を遂げるケースが多々あります。逆に、本業の赤字を本社ビルの売却益(特別利益)で帳尻合わせした見かけの黒字企業こそ、警戒すべき対象です。

第2の誤解は、「粗利(売上総利益率)が高いビジネスモデルなら潰れない」という盲信です。近年増加したD2C(Direct to Consumer)やSaaSビジネスでは、粗利率が70%〜80%に達することも珍しくありません。しかし、競合ひしめく市場で顧客を獲得するためのウェブ広告費やインフルエンサー施策費、システム開発エンジニアの採用費が膨れ上がり、販管費が粗利を完全に食い尽くして大幅な営業赤字に陥る構造が定着しています。

こうした状況を打破するために不可欠なのが損益分岐点分析(CVP分析)です。費用を「売上に比例して増える変動費」と「売上に関わらず一定額発生する固定費」に分類し、売上高と総費用がちょうどイコールになる売上高(損益分岐点売上高)を算出します。固定費が重すぎる企業は、売上が少しでも計画を下回った瞬間に赤字へと転落します。粗利率の高さに安心するのではなく、自社の損益分岐点比率が何%にとどまっているかを確認することが、不況下での生存確率を左右します。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。