なぜバイオリンのような西洋楽器に対して、日本古来の「挺」という漢字が当てられるようになったのでしょうか。その歴史的背景には、明治期の近代化と漢字本来の意味が深く関わっています。
漢字の「挺」は、「まっすぐに伸びているもの」「手で抜き取る・手に持って扱う道具」を指す字源を持ちます。古くから日本において「挺」で数えられてきた代表的な道具には、以下のようなものがあります。
- 刀剣・槍・火縄銃(手に持って構える武器)
- 墨・蝋燭(細長く固まった手持ちの道具)
- 人力車・駕籠(前方に棒状の柄があり、手で引いて進む乗り物)
- 三味線・胡弓・琵琶(棹を持ち、手に抱えて演奏する伝統弦楽器)
明治時代に西洋音楽が日本へ移入された際、すでに国内で定着していた三味線や胡弓の助数詞「挺」が、同じく手で保持して演奏するバイオリンにも自然と適用されました。この文化的スライドによって、バイオリンの正式な助数詞=1挺(いっちょう)という日本語表現が確立されました。なお、簡易表記として「丁」が使われることもありますが、道具・器具としての本字は「挺」です。