聖地・両国国技館の熱気がピークに達したあの日、電撃的な報せは角界のみならずスポーツ界全体を駆け巡った。度重なる膝の故障や満身創痍のコンディション。過酷なリハビリを重ね、土俵への復帰を諦めなかったものの、持てる力を振り絞った最後の1番を終えた瞬間、男の心の中で「ひとつの時代」が終わりを告げたという。
親しい関係者によれば、決断に至るまでの数ヶ月間、誰にも弱音を吐かずひとり黙々と汗を流し続けていたそうだ。勝ち越しへの執念と、プロとしての美学。そのはざまで揺れ動いた苦悩の末に出した答えが、電撃的な現役引退であった。