現代の天皇賞(秋)を語る上で避けて通れないのが、極限にまで引き上げられた走破タイムとペースの推移です。天皇賞秋の過去ラップタイムを分析すると、レースの前半1000mが57秒台から58秒台前半という、かつてのマイル戦に匹敵するペースで流れる事例が増加しています。
パンサラッサが大逃げを打った2022年の前半1000m通過は57秒4、ジャックドールが引っ張った2023年も57秒7という超ハイペースでした。このようなラップ構成になると、単なるスピードだけでは到底生き残れません。極限のペースで追走しながら、なおかつラスト3ハロンで33秒台から32秒台の末脚を繰り出す「高速巡航力と瞬発力の両立」が絶対条件となります。
天皇賞秋の過去脚質傾向において、純粋な逃げ馬が勝ち切る難易度は年々上がっています。パンサラッサのような歴史的ハイラップの逃げですら、最後はイクイノックスの鋭角的な末脚に屈しました。主流となるのは、中団(5〜8番手)で折り合いをつけ、直線半ばから力強く突き抜ける「差し馬」、あるいは好位4番手以内からしぶとく脚を伸ばす「先行力を持った実力馬」です。
当時の共同記者会見や勝利ジョッキーインタビューで各騎手が口を揃えるのは、「東京の長い直線で仕掛けをギリギリまで我慢できるかどうかの勝負」という点です。早く先頭に立ちすぎると、東京の急坂(だらだらと続く高低差2.1mの勾配)を越えた残り200mで脚色が鈍り、後続の強襲に呑まれるリスクが跳ね上がります。