「サイドを短く刈り上げて上を残すだけ」という一見シンプルな構造のベリーショートツーブロックですが、実はメンズカットの中で最も美容師の技術と骨格の見極めが問われるスタイルの一つです。SNSや知恵袋を覗くと、「横の毛がピンピン立ってカッパのようになった」「頭が四角く見えて顔の大きさが強調された」といった生々しい告白が散見されます。この悲劇を生み出す原因の8割は、毛質と頭蓋骨の形状に対する計算不足にあります。
日本人の髪は欧米人に比べて断面が丸く、1本1本が太くて硬いため、短く切ると真横に向かって強く立ち上がる性質を持っています。さらに、側頭部から頭頂部にかけての角(ハチ)が張っている骨格が多いため、ハチの下まで無警戒にバリカンを入れてしまうと、上から被さるトップの毛が直毛の反発力に耐えきれず、横に飛び出すように浮き上がってしまいます。これが、鏡を見た瞬間に「似合わない」と絶望する物理的なメカニズムです。
都内有名バーバーのマネージャーは、現場の実情を次のように明かします。「カタログ写真のモデルは毛流れにクセがあるか、パーマやアイロンで完全に毛先を寝かせて撮影しています。それを直毛のお客様にそのまま当てはめ、毛量を減らしすぎると、重みで抑え込むことができなくなって毛先が暴れてしまうのです」。ベリーショートツーブロック失敗の理由は、本人の顔立ちではなく、「髪の硬さ」「ハチの張り具合」「被せる毛の長さ」という3点の力学的バランスが崩れていることに尽きます。