ドラえもんの世界には、「地球破壊爆弾」や「どくさいスイッチ」「人間製造機」「悪魔のパスポート」など、世界規模の破滅や倫理崩壊をもたらす超危険道具が多数登場します。それら超兵器と比較した際、なぜ「ころばし屋」が今なお読者の記憶に深く刻まれているのでしょうか。
世界を消し去るような大道具は、子どもの日常感覚から乖離した「SF的ファンタジー」として受け止められます。対して、ころばし屋がもたらすのは「怪我や痛み」「追い詰められる焦燥感」「お金が足りないというリアルな金銭的制約」という、極めて身近で生々しい恐怖です。
「街角の物陰からコツコツと足音を立てて迫ってくる」「誰もが持っている10円玉ひとつで起動してしまう」という日常と地続きのサスペンス構造が、何十年経っても色褪せないトラウマを生み出しているのです。