韓国人男性がアッパと呼ぶ理由について、現地の20代〜40代男性や留学生コミュニティを対象とした定性調査では、興味深い二重構造が浮き彫りになります。ソウル市内の大学に通う男子学生(23歳・兵役修了)の証言によると、「入隊中は部隊内で家族について語る際、厳格に『アボジ』を使うよう訓練されたが、除隊して実家に帰った初日、無意識に口から出たのはやはり『アッパ、ただいま』だった」という実情が語られています。
現地SNSやポータルサイトのコミュニティ掲示板で交わされる議論を分析すると、成人男性が父親をアッパと呼ぶことに対して「家族愛が深く微笑ましい」「不自然さはまったくない」と捉える割合が圧倒的多数を占めます。一方で、次のような厳格な「社会ルール」が存在することも共通認識となっています。
「実家で父親と2人きりの時は一生『アッパ』で構わない。しかし、彼女を初めて父親に紹介する場や、職場の上司がいる会食の席で父親から電話がかかってきた際、間違っても『アッパ?今飲み会だから後で』と出てはならない。そこは瞬時に『はい、アボジ』と切り替えるのが大人の嗜みだ」(韓国・大手IT企業勤務 34歳男性の投稿)
この発言が示す通り、成人男性がアッパと呼ぶ行為は「親離れができていない甘え」ではなく、「家族という身内の結界内だけで許された親密さの特権コード」として機能しています。兵役という絶対的な序列社会を経験した男性であっても、家庭という最小単位のセーフティネットに戻った瞬間、過度な緊張を解くスイッチとして「アッパ」という語彙が機能しているのです。