「イエベ(イエローベース)」と「ブルベ(ブルーベース)」という記号化された枠組みは、消費者の購買行動を牽引する強力なマーケティングワードとして定着しました。しかし、大手化粧品メーカーの研究員が明かす実態は、この単純明快なイメージとは大きく乖離しています。「日本人の肌色測定データを数千人規模でクラスタリング解析すると、明確にイエベ・ブルベの両極に二分できる層は全体の約38%にとどまり、過半数を超える約62%の肌は両者の中間に位置するニュートラル領域、あるいはグリーンやグレーの要素を含むオリーブトーンに分類される」という事実が判明しています。
それにもかかわらず、多くのコスメカウンターや簡易WEB診断では、利用者を無理やりどちらかの陣営へと振り分け続けてきました。ここに、現場での「診断通りに買ったのに似合わない」という悲劇の根源があります。
決定的な盲点となっているのが、「肌のアンダートーン(皮下組織の基調色)」と「オバートーン(表皮の表面色)」の解離です。アンダートーンは生まれ持ったメラニン色素の質や遺伝的要素によって一生涯ほとんど変化しません。対してオバートーンは、紫外線による日焼け、摩擦、ホルモンバランスの乱れによる肝斑、あるいは寒暖差による毛細血管の拡張によって日々刻々と変化します。
「自分は顔に赤みがあるからブルベだと思い込み、ピンク系のベースを選んでいたが、実は皮膚が薄くて毛細血管が透けているだけのイエベ肌だった」というケースは典型例です。オバートーンの赤みを打ち消さずにピンクを重ねることで、顔全体が鬱血したような印象を与えてしまうトラブルが頻発しています。肌の色の種類を正確に捉えるには、表面に見えている一時的な色相と、皮膚の深層に宿る本質的なトーンを厳密に切り分けて観察する視線が欠かせません。