おしりから太もも裏の痛みや、おしりから太もものしびれ原因を紐解く上で、起点となるのが「坐骨神経」の解剖学的走行です。坐骨神経は腰髄から発し、おしりの深層を通過して太もも裏、ふくらはぎ、足先へと伸びる人体で最も太く長い末梢神経です。この神経経路のどこかで物理的な圧迫や血流障害、炎症が生じると、走行ルートに沿って鋭い痛みやピリピリとしたしびれが放散します。臨床現場において最も高頻度に確認される3大要因を整理します。
第1に挙げられるのが腰椎椎間板ヘルニアです。背骨を構成する椎骨同士のクッション材である椎間板が、長時間の不良姿勢や重い荷物の持ち上げによって破綻し、内部の髄核が脱出して坐骨神経の根元(神経根)を圧迫します。特に20代から40代の比較的若い世代に好発し、前屈みの姿勢をとった際におしりから大腿部後面へ電撃のような痛みが走る特徴を持ちます。
第2の要因は、中高年以降に急増する腰部脊柱管狭窄症です。加齢に伴う椎骨の変形や黄色靭帯の肥厚によって、脊髄や神経根が通る「脊柱管」が狭小化します。歩行を続けるとおしりや足に重だるい痛みが生じ、前かがみで少し休むと再び歩けるようになる「間欠跛行(かんけつはこう)」が決定的な兆候です。背筋を真っ直ぐ伸ばす姿勢で管が狭まるため、高齢者がカートを押して腰を丸めると楽に歩ける背景にはこの病態が存在します。
第3の盲点となりやすい原因が梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)です。骨盤の奥深くに位置し、股関節の回旋を担う平べったい筋肉「梨状筋」の下を坐骨神経がくぐり抜けています。長時間の着座や運動不足、あるいは過度のランニングによって梨状筋が硬直すると、神経を直接挟み込んで絞扼します。座ると痛い理由の多くは、座面に坐骨が押し付けられて梨状筋が圧迫され、神経への虚血が強まることに起因しています。