府中市美術館が多くの鑑賞者を惹きつけてやまない理由は、単に美術品を並べて展示するだけの施設にとどまらない、開かれた空間設計と先駆的な試みにあります。設計を手掛けたのは、公共建築に定評のある建築家・岡田新一氏。府中の森公園の樹木や景観を損なわないよう配慮された低層構造の建物は、武蔵野の自然光を心地よく取り込み、館内に足を踏み入れた瞬間から穏やかな静けさを提供してくれます。
施設は2層構造になっており、1階は誰でも無料で利用できる「無料エリア」、2階が「有料展示室」という明確なゾーニングが敷かれています。1階には、美術図書室や市民ギャラリーに加え、現役の美術作家が滞在して作品を制作する様子を間近で見学できる「公開制作室」を設置。制作過程そのものをアートとして共有するこの取り組みは、全国の公立美術館のなかでも先駆けとして知られ、現場を訪れた来館者からも「作家の手仕事を息遣いまで感じられる貴重な場」として高い評判を得ています。
2階の展示室では、年に数回開催される大型の企画展と、同館が誇る充実したコレクションを公開する所蔵品展(常設展)が展開されます。特に所蔵品展では、府中市にゆかりの深い近代洋画の巨匠・牛島憲之の記念館が常設併設されており、静謐で詩情あふれる牛島ワールドを常時鑑賞できる点が、美術ファンの間で高く評価されています。