国立市における景観論争は、今回が初めてではありません。その背景には、2000年代初頭に全国的な注目を集めた「国立マンション訴訟」の過去事例が存在します。
国立駅前のメインストリート「大学通り」沿いで、明和地所が開発した14階建てマンション(クリオレミントンヴィレッジ国立)を巡り、景観利益の侵害を理由に住民と行政が激しく争いました。一審の東京地裁では高さ20メートルを超える部分の撤去命令が出たものの、2006年の最高裁判決では建築当時の法規制を満たしていたとして撤去請求は棄却。しかし、この司法判断を契機に景観への法的権利が社会的に認知され、景観法の制定や各自治体の条例整備が急速に進むことになりました。
国立市でも独自の「国立市景観条例」と高度地区による高さ制限が厳格に定められてきましたが、今回の富士見通りの敷地は商業地域に該当し、法的な制限枠内には収まっていました。「法令上はクリアしていても、街の歴史的コンセンサスと衝突する」という国立特有の文脈が、今回の自主解体判断の根底にあったと言えます。