「本日、土用の丑の日」――エレキテルで知られる江戸時代の天才蘭学者・平賀源内が、客足の途絶えたウナギ屋のために書いた貼り紙がヒットのきっかけだったという説はあまりにも有名だ。しかし、話はそう単純ではない。
当時の江戸の人々は、凶事や病魔を払う手段として「言葉遊び」や「陰陽五行」の理論を巧みに生活に取り入れていた。申の日の対極に位置する丑の日は、火の気が強い夏において水を象徴する方角とされる。つまり、燃えるような暑さに対抗するための「冷やし」や「浄化」の祈りが、この日に込められていたわけだ。源内のプロモーションは、そうした庶民の潜在的な信仰心に見事にはまったに過ぎない。