ネット上の反応を検証すると、池脇千鶴という女優に対する評価の変遷は、視聴者の価値観そのものを映し出す鏡であることがわかります。2021年初期の掲示板やSNSでは、「昔はあんなに可愛かったのにショック」「どうしてここまで劣化したのか」という、外見至上主義(ルッキズム)に基づいた短絡的なバッシングや憐憫の声が溢れかえっていました。
しかし、ドラマ第1話から回を重ねるごとに、視聴者の論調は180度転換しました。「あんなに惨めで、でも愛おしい40歳の姿を本気で演じられる女優が他にいるだろうか」「綺麗に見せることしか頭にない女優たちへの強烈なカウンターだ」という賞賛へと塗り替えられたのです。
映画監督や映像ディレクターたちが口を揃えて語るのは、「池脇千鶴はモニターチェックで自分の顔のシワや崩れを消してくれとは絶対に言わない」という希有なプロ意識です。日本のドラマ界では、照明の工夫や肌の過剰なデジタル補正によって「不自然な若さ」を維持しようとする傾向が根強く残っていますが、池脇はそのような虚飾を完全に拒絶しています。自らの肉体をキャラクターに貸し出す器として差し出す姿勢こそが、同業他者から畏敬の念を集め続ける本質的な強みです。