早朝5時、まだ薄暗い中津川市内の仕込み場に、冷気が張り詰める。箱を開ければ、駿河湾から届いたばかりの生桜エビと、氷見から直送された寒ぶり。氷を打ち、素早く包丁を入れる職人の手元に迷いはない。「海の近くで食べる鮨が一番だなんていうのは、もはや過去の固定概念ですよ」と、地中津川で店を構える若手店主は不敵に笑う。
仕入れ技術の進化だけではない。この地で評価を高めている名店に共通するのは、素材の温度管理と熟成に対する並々ならぬこだわりだ。遠方から運ばれた魚の水分を微小な単位でコントロールし、旨味を最大限に引き出す。山の中だからこそ、一握りに対する探求心が自ずと研ぎ澄まされるのだという。