シルバーマーク(正式名称:高齢運転者標識)の対象年齢と義務規定について、正確な法的位置づけを把握しているドライバーは意外なほど少数にとどまります。道路交通法第71条の5における規定の骨格は極めてシンプルです。
法律上、普通自動車を運転することができる免許を受けた「70歳以上75歳未満」のドライバーで、加齢に伴って生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがある者は、普通自動車の前面および後面に高齢運転者標識を付けて運転するように「努めなければならない(努力義務)」と定められています。さらに「75歳以上」のドライバーについても、同様に表示の努力義務が課されています。
ここで多くの人が混乱する原因となっているのが、過去の法改正をめぐる経緯です。2008年6月の道路交通法改正時、75歳以上のドライバーに対してマークの表示が「完全義務化」され、違反者には反則金(2,000円)と違反点数1点を科す規定が施行されました。しかし、当時の高齢ドライバーや世論から「高齢者を過度に区別・差別している」「運転に自信があるのに一律の罰則はおかしい」といった猛烈な反発が巻き起こりました。その結果、国会で法改正が即座に行われ、翌2009年4月には罰則の適用が正式に廃止され、努力義務へと戻されたという歴史があります。
現在に至るまで、70歳以上でも75歳以上でも、シルバーマークを貼らずに運転したことによる罰金や点数加算といった行政処分・刑事罰は存在しません。免許更新時にマークの所持を強制されることもなく、装着するか否かの最終判断はドライバー本人に委ねられています。