結論から明かすと、靴を重曹水に「一晩(6〜8時間以上)つけっぱなしにする」行為は、靴の寿命を縮め、見た目を損なう大きなリスクを伴います。「長く浸ければ浸けるほど汚れが浮き出る」という思い込みこそが、数多くの靴を台無しにしてきた最大の盲点です。
重曹(炭酸水素ナトリウム)は水に溶かすと弱アルカリ性(pH8.2前後)を示します。足裏から分泌される汗や皮脂、酸性腐敗臭(イソ吉草酸など)を中和・分解するのに絶妙な性質を持っていますが、長時間の浸漬は以下のような弊害を靴にもたらします。
靴の重曹つけおきで黄ばみが発生する原因は、主に2つの化学反応にあります。1つ目は、繊維の奥深くに浸透した重曹のアルカリ成分がすすぎ残しによって靴に残留し、乾燥時に太陽光の紫外線と化学反応を起こして黄色く変色する現象です。2つ目は、靴のソールとアッパーを固定している合成接着剤が長時間のアルカリと水分に晒されて加水分解を起こし、接着剤の成分が溶け出して生地に染み出し、変色を定着させてしまう現象です。
さらに、一晩放置すると一度水中に溶け出した汚れが再び繊維の隙間に吸着する「再汚染」が発生しやすくなります。重曹の界面活性作用や油分分解力は穏やかなため、長時間の放置によって汚れを含んだ液が濁ったまま繊維に沈着し、かえって全体がくすむ原因にもなります。