「僕のこと」の原点は、第97回全国高校サッカー選手権大会の応援歌としての書き下ろしオファーにあります。大森元貴は当時若干22歳。スポーツの公式タイアップといえば「勝利」「栄光」「仲間との絆」といった前向きなワードを前面に押し出すのが王道とされていた時代に、彼が選んだアプローチは驚くほど冷徹で、そして途方もなく温かいものでした。
大森自身、当時の特番インタビューや公式インタビューで「自分自身は決してスポーツ少年ではなかったからこそ、綺麗事だけの『頑張れ』は絶対に歌いたくなかった」と赤裸々に告白しています。全国高校サッカー選手権は、4,000校を超える参加校の中で、頂点に立てるのはたった1校のみ。残りのすべてのチームが、どこかの段階で敗北と挫折を経験してグラウンドを去ることになります。
「敗れていった圧倒的多数の少年たち、ベンチにすら入れなかった部員たち、そして応援席にいた人たちの流した汗や涙は、勝てなかったからといって無意味になってしまうのか?」。その残酷なリアリズムに向き合い、「たとえ奇跡が起きなくても、積み重ねてきた日々のすべてを肯定したい」という強い祈りから紡ぎ出されたのが、本作の骨格でした。制作陣が当初予想していたアップテンポな疾走アンセムではなく、重厚なミディアムバラードとして提出されたデモ音源を聴いた大会関係者は、その圧倒的なスケールと深さに息を呑んだと伝えられています。