一般的に「ケンシロウは敵を倒すたびにこの台詞を叫んでいる」と思われがちですが、一次資料である原作コミックスを検証すると驚くべき事実が判明します。原作漫画において、ケンシロウが完全に一致する形で「お前はもう死んでいる」と発言したのは第1話を含めてごくわずかです。
原作本編では状況に応じて「お前の命はあと5秒」「お前はすでに死んでいる」「貴様はあと3秒で死ぬ」といった多様なバリエーションが使われており、同一の台詞を機械的に繰り返す演出は避けられていました。このギャップを生んだ最大の要因が、1984年から放送された東映動画制作のテレビアニメ版です。
名優・神谷明氏が演じるケンシロウの超絶的な怪鳥音「アタタタタタタ!」と、攻撃終了後の静寂の中で響く低音ボイスのコントラストは、アニメならではの様式美として完成されました。さらに次回予告のラストで視聴者に向けて放たれる締めの言葉として毎週放送されたことで、視聴者の潜在意識に「北斗の拳=お前はもう死んでいる」という等式が確立されたのです。