京都の豚骨文化を語る上で避けて通れないのが、木津川市に本店を構える「無鉄砲 京都本店」の圧倒的な評判と存在感です。市街地から遠く離れた国道163号線沿いという決して利便性が高くない立地でありながら、連日府内外から熱心なファンが押し寄せ、行列が途切れることはありません。
無鉄砲の創業者・赤迫重質氏がかつてメディアのロングインタビューで語った「骨が完全に溶けて砂のようになるまで炊き尽くす。豚骨と水だけで世界一の濃度を作る」という信念は、そのまま厨房の光景に現れています。巨大な羽釜に1日数百キログラムもの国産豚骨(ゲンコツ、背骨、頭骨など)を投入し、特注の巨大な木ベラで骨を砕きながら煮込み続ける作業は、もはや料理というより激しい格闘技の様相を呈しています。
巷では「あそこまでドロドロなのはラードを大量に投入しているからだ」という噂が囁かれることもありますが、京都のどろ系豚骨におけるスープの真相は真逆です。スープの粘性を生み出している主成分は、油ではなく豚骨から抽出された高濃度の天然コラーゲン(ゼラチン質)と超微粒子化された骨粉です。そのため、レンゲが直立しそうな粘度でありながら、純粋な豚骨と水しか使用していないため酸化した油の嫌味がなく、食後の胃もたれが極めて少ないという特徴を持っています。一口すすると唇がペタペタと吸い付くような感覚と、骨髄の奥深い甘みが広がる体験は、京都の濃厚豚骨のおすすめ店として唯一無二の地位を不動のものにしています。