「せせり」とは、鶏の首周りの筋肉(首肉)を指す部位です。精肉業界や地域によっては「ネック」「小肉(こにく)」「きりん」「そろばん」など多彩な呼び名が存在します。鶏は周囲を警戒したり餌をついばんだりするために常に首を激しく動かしており、その運動量の多さから筋肉が非常に発達しているのが構造上の大きな特徴です。
この部位が「希少部位」と呼ばれる最大の理由は、その絶対的な採取量の少なさにあります。一般的なブロイラー(生体重約2.5〜3.0kg)から得られる精肉のうち、せせりは左右2本合わせてわずか20〜40g程度しか採取できません。成鶏1羽から取れる正肉全体の数パーセントにも満たないため、かつては市場に広く流通せず、焼き鳥専門店や精肉解体業者など一部のプロの間で重宝されていました。
語源は関西地方の方言である「せせる(ほじる、つつく、ほじくり出すという意味)」に由来します。首の骨(頚椎)の周囲に複雑に絡みつくように付着している肉を、職人が1本ずつ丁寧に包丁や骨抜きを使って「せせり取る」作業が必要だったことから、その名が定着しました。機械による自動脱骨が極めて難しく、熟練の手作業による歩留まりの低さが、希少性と価格を押し上げる要因となっています。