歴史の針を巻き戻すと、このプロダクトの起源は1951年のアメリカ・オハイオ州アクロンに行き着く。工業ゴムの街として栄えたこの地で、クイッキー社 (Quickey Manufacturing Co.) が特許を取得した柔軟なビニール製小銭入れ「クイコイン (Quikoin)」を世に送り出したのがすべての始まりだった。
当時、パーキングメーターや公衆電話に投入する小銭を片手で素早く取り出せる画期的なツールとして、瞬く間に全米へ普及。銀行、タイヤメーカー、ローカルな金物屋に至るまで、企業名をプリントして配る販促ツールの王座に君臨した。タフで擦り切れない素材感、衣服のポケットを突き破らない丸みを帯びたフォルムは、古き良きアメリカンカジュアルの原風景そのものだ。半世紀以上の時を経ても基本設計がミリ単位で変わっていないという事実こそ、完成されたインダストリアルデザインの証左といえる。