蜜月関係に見えた二人に、なぜ「不仲説」が浮上したのでしょうか。ネットの掲示板やSNS、カルチャー誌の行間から広まった噂を検証すると、3つの構造的背景が浮かび上がってきます。
第1の発火点は、「表現手法と美学の決定的な乖離」です。藤原ヒロシは過度な露出を嫌い、知る人ぞ知るサロン的な空気感やミニマリズムを貫きました。一方のNIGOが展開するBAPEは、カモフラージュ柄やシャークフーディーなど視覚的インパクトを押し出し、ファレル・ウィリアムスら米国のトップラッパーと結びついてハイパーコマーシャルな道を進みました。このスタイルの乖離が、「藤原が商業主義に走ったNIGOを嫌悪した」という俗説を生む土壌となりました。
第2の発火点は、「2011年のBAPE売却劇」です。急拡大したBAPEの運営会社ノーウェアは莫大な負債を抱え、香港のアパレル大手「I.T」に売却されることになります。クリエイティブの実験場だった原宿が外資資本に買収された出来事はシーンに衝撃を与え、「師匠の教えを裏切ったのではないか」という無根拠な憶測を呼びました。
第3の発火点は、「公の場での共演減少」です。2010年代以降、藤原ヒロシはfragment design(フラグメントデザイン)を通じて世界中のハイブランドと協業し、NIGOは自身の新ブランドHUMAN MADE(ヒューマンメイド)の立ち上げや海外メゾンのディレクションに専念。物理的に二人が揃ってメディアに露出する機会が激減したことが、ネット上での「絶縁説」を加速させました。
しかし、これらはすべて外野が作り上げたストーリーに過ぎません。両者ともに過去のインタビューで相手への個人的な敵意を語ったことは一度としてなく、互いの独立性を尊重する大人の距離感へとシフトしたのが実態です。