桑田佳祐のカバー史を語る上で欠かせないのが、1993年から2026年まで続いたエイズ啓発活動「Act Against AIDS(AAA)」です。桑田はその中核を担い、毎年11月30日から12月1日の「世界エイズデー」前後にパシフィコ横浜で趣向を凝らしたスペシャルライブを敢行してきました。
ビートルズをはじめとする洋楽ロックのトリビュート、昭和歌謡やジャズの再解釈など、桑田がステージ上で見せた変幻自在のパフォーマンスはファンの間で伝説化していきます。その集大成として企画されたのが、白組・紅組の全出場歌手を桑田佳祐ただ1人で演じ分ける『ひとり紅白歌合戦』でした。
2008年の第1回(61曲)、2013年の第2回(55曲)、そしてAAA活動の節目として2018年に開催された『平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦』(55曲)を通じて、歌唱された楽曲は重複を除いても全171曲にのぼります。桑田は当時のインタビューや公式コメントで「大衆音楽の先達への恩返しであり、日本の優れたメロディを後世へ手渡すための作業」と語っており、パロディと敬意が高度に同居したエンターテインメントとして今なお称賛を集めています。