ネット上の情報空間には、刺激的な見出しや断片的なゴシップが溢れており、正確な事実関係が見えにくくなっています。読者が押さえておくべき「盲点」は以下の3点です。
第1に、「現・橋之助(四代目)自身が芸子とトラブルを起こした事実はない」という点です。前述の通り、密会報道の当事者は父親である現・芝翫であり、名跡の切り替わり時期にニュースが重なったための混同です。
第2に、「花街と歌舞伎界の交流そのものが悪ではない」という点です。京都の「顔見世興行」における「総見(そうけん)」に代表されるように、芸妓・舞妓が劇場に足を運び、役者の芸を鑑賞して自らの舞の糧にする文化交流は、何百年も培われてきた正統な伝統儀礼です。問題視されたのは文化的な交流ではなく、極めて個人的な不貞行為の文脈であったことを切り分けて理解する必要があります。
第3に、「成駒屋の結束と三兄弟の台頭」です。父の報道という逆風を経験しながらも、四代目橋之助、三代目中村福之助、四代目中村歌之助の三兄弟は着実に実力をつけ、自主公演「神谷町小歌舞伎」などを通じて新たなファン層を開拓しています。過去の報道という傷痕を、芸の力で乗り越えようとする次世代の歩みこそが、現在の実態と言えます。