「盂蘭盆会」という言葉は、一般に「うらぼんえ」と読みます。普段私たちが「お盆」と略称で呼んでいる行事の正式な仏教儀礼の名称です。日本の公的な歴史記録では、推古天皇14年(606年)の宮中行事が起源とされ、奈良時代・平安時代を経て貴族社会から武士、そして江戸時代に庶民へと広く定着しました。
日常会話で使われる「お盆」と正式名称である「盂蘭盆会」に、信仰の対象としての根本的な違いはありません。しかし、実務と宗教性の観点では明確な使い分けが存在します。お盆が「帰省して家族で過ごす長期休暇や民俗的イベント」という広義の生活文化を指すのに対し、盂蘭盆会は寺院での法要や自宅での僧侶による読経供養といった厳格な仏教儀礼そのものを指します。
この言葉の由来は、古代インドのサンスクリット語「ウランバナ(ullambana)」を漢字で音写したものです。ウランバナが意味するのは、驚くべきことに「倒懸(とうけん)」、すなわち「逆さ吊りにされる耐え難い苦痛」でした。なぜ先祖を穏やかに迎える行事の名に、このような凄惨な言葉が冠されているのか。その背景には、大乗仏教の重要経典『盂蘭盆経(うらぼんぎょう)』に記された、母と息子の衝撃的な伝説が存在します。