2003年8月6日、スポルティングの新本拠地エスタディオ・ジョゼ・アルヴァラーデの落成記念試合として開催されたマンチェスター・ユナイテッドとのプレシーズンマッチ。この90分間が、サッカーの歴史を不可逆的に変えることになりました。当時18歳のロナウドは左サイドで先発し、対峙した名手ジョン・オシェイをキレ味鋭いステップオーバーで幾度となく翻弄。試合は3-1でスポルティングが完勝しました。
当時の報道や選手たちの回想録によると、ハーフタイムの控え室でオシェイは息を切らし、「あいつはいったい何者なんだ」と呆然自失の状態だったと伝えられています。キャプテンのロイ・キーンやリオ・ファーディナンドら主力選手たちは、試合直後のドレッシングルームで名将アレックス・ファーガソン監督に対し「今すぐあの少年と契約すべきだ」と詰め寄りました。ファーガソン自身も試合中からその異次元の才能を即座に見抜き、スタジアムの貴賓室で直接交渉を開始。移籍金1224万ポンド(当時の10代選手としてイングランド史上最高額)で電撃移籍が成立しました。
マンチェスター・ユナイテッド加入時、ロナウドはスポルティング時代と同じ「背番号28」を希望していました。ジョージ・ベスト、ブライアン・ロブソン、エリック・カントナ、そしてレアル・マドリードへ移籍したばかりのデビッド・ベッカムが背負った伝説の背番号7には、あまりに重いプレッシャーがあったためです。しかしファーガソンは首を縦に振らず、強い眼差しでこう命じました。
「いいや、お前が背負うのは7番だ。お前にはこのシャツを着る資格と責任がある」
この名将の絶対的な信頼と背番号の継承が、18歳の少年に世界一のプレイヤーへと駆け上がる覚悟を植え付けたのです。