本作の真骨頂は、ジャンルの境界線を軽々と飛び越える独創的な語り口にある。偉大な祖師・空海が遺した足跡や密教の教えを紐解く歴史ドキュメンタリーの重厚な知見を土台に据えつつ、観客の心拍数を跳ね上げる緊迫のミステリー・サスペンスとして物語が疾走するのだ。
八十八の札所に隠された暗号、点と点がつながる瞬間のカタルシス、そして歴史の闇に葬られた伝承の真実。知的好奇心を刺激する綿密な時代考証と、先の読めないスリリングなプロットが見事な調和を見せる。史実の重みを知る歴史ファンからスリルを求めるエンタメファンまで、あらゆる観客を唸らせる複層的な構造が構築されている。